吸収合併・M&Aされたパチンコ店の従業員はどうなってしまうのか?解雇に怯える社員たち
最初に
弱肉強食が続くパチンコ店の現在。好調なお店と倒産寸前なお店の落差が激しい2023年の遊技産業事情
という記事を公開しましたが、実際に働いていた従業員はどうなってしまうのか?
この問題は一概には言えませんが、実際にあったいくつかの例を紹介していきます。
先にネタ晴らしをしておきますが、譲渡先に移籍して給料が上がって幸せになったという話は全く聞きません。待っているのは……
これはパチンコ店従業員の方に読んで欲しい記事の一つです。
大半のパチンコ店が譲渡された場合
過去に実際に合った話です。8店舗お店がありそのうち7店舗が譲渡された場合ですが、元々の法人に残ることができる社員が一定数存在します。なぜなら残るお店を運営するだけの人員も必要であり、別事業を行ってるならそちらに転籍することも不可能ではありません。しかし当然ならよほど大きな会社でない限りは希望者全員が移籍できることはありませんし、移籍できたとしても年収も大きく下がり年齢制限も存在するはずです。
※年令制限に関しては労基の関係もあり公表されることはないでしょう。
しかし若い社員だけを残したならば不平不満が溢れるので数人は年齢が高めの社員も移籍します。しかし当然ながらそういった社員は経営者のお気に入りだけだと思うべきです。
ここまでが元々の法人に残る社員たちです。残れなかった社員には2つの道の選択肢が示されます。ここからは全てのお店が譲渡された場合とほぼ同じです。
全てのパチンコ店が譲渡された場合
譲渡先の法人に就職するか?退職するかの2択です。ここでも年齢制限は出てくるはずです。給与面に関しても譲渡先の基準に従うことになるでしょうし、例えば役職者であっても譲渡先の中途社員初任給、もしくは正社員でなく契約社員という道が示される可能性もあります。譲渡する際に旧経営者は雇用に関してのある程度の保証や取り決めを行うことが多いですが、当然ながらそのままの給与体系というのはあり得ません。譲渡先としては雇用するための条件は出すが、それに納得ができないのなら退職してもらっても構わないというのがスタンスでしょう。
実際には条件面の提示をされた際に、退職した場合の失業手当の計算までしてくれて退職を勧められたという話さえあります。
数年間は新体制の移行の為に雇用の約束、また大量の退職者を避ける為にある程度の給料水準の維持があればあれば、不満を持ってはいけないほどのかなりの譲歩でしょう。
理由としては複数店舗のお店を買ったとしても当然ながら不採算店舗を運営する必要はないので閉店させて売却します。その為、旧社員を再雇用するとしても同じだけの人数は不要なのである程度退職させる必要があるでしょう。どうしても一定数の社員を減らせない場合は、無理な転勤先を辞令として出すことで半リストラのようなことをした例もあります。
その反面、営業してるお店を譲渡、継承なら店を経営し続ける必要があります。
屋号をそのままで営業している間は旧スタッフの力が必要かもしれませんが、屋号変更の為に休業してリニューアルするというのなら設備関連、システム関連の研修をする時間もあるので、そこまで旧スタッフは必要となりません。むしろ旧経営者の価値観を刷り込まれた幹部社員は邪魔だとさえ思うかもしれません。しかし店を運営する為には人数が必要です。M&Aする法人は他県から進出してくることも多いので、人事異動だけで人員をまかなうことには無理があります。現実的なのは現地でアルバイト社員、正社員の募集を行いながら自社の社員を幹部として転勤、旧経営者の社員を1店舗当たり1名というのが現実的なところです。
実際には旧経営者の社員数はもっと多いかもしれませんが、最終的には旧社員は排除という考えを持っているなら
●昇給の不遇
●賞与査定の不遇
●役職などの不遇
●転居を伴う転勤命令
これらを行うだけでどんどんと旧経営者の社員はどんどん退職していきます。実際に8店舗M&Aされたグループでは約100名(8割)の正社員が譲渡先に雇用をされたようですが、5年経過した今では5人ぐらいしか残っていないということです。
中途採用で入社しても差別しません、平等ですと言われて信用して譲渡先に入社したものの現実はこんなものだったというところが大半かもしれません。
こうなってしまうととっととパチンコ業界から身を引いて新たな業界に飛び込んだほうが、よっぽど希望がある未来を掴むことができるでしょう。
数店舗、もしくは1店舗だけを残した法人
さてここからはM&Aされた社員にとって朗報かもしれません。いままで調べたケースでは2店舗もしくは1店舗だけを残してパチンコ事業を継続して成功した例は今のところありません。むしろほとんどが失敗例です。
パチンコ業界M&A情報 引用元 パチンコ情報島
自滅した法人の例
ある法人では譲渡が官報に掲載される前日に全社員に通達のメールがあり、本部社員だけが新法人に移籍して残る社員の雇用は譲渡先に委ねられることになりました。
突然のことで自分たちがどうなるのか分からない、何の説明もないまま経営陣は雲隠れに近い状態だったそうです。
新法人では1店舗だけを運営していたそうですが、店長や幹部社員は社長のお気に入り、アルバイトに関してはそのまま雇用継続していました。
しかし実はその店長は決して優秀な人材ではなく、どちらかと言えば評論家体質の店長だったようで、話を聞く限りは配属された5店舗全てで一度も業績を上げたことはなかったという経歴の持ち主です。全体の売上、粗利、アウトが落ち続けている状態で、海のアウトが先月に比べて+3000上がっていますなど都合がよいところだけ切り取って報告しているような人だったということですが優秀な人材ということで社長には気に入られていたということです。
しかし実際には普通に遅刻してきて部下にタイムカードを押させる、一度店に顔を出したらそのまま退勤まで帰ってこないなど典型的な不良店長です。
案の定、1年後には最後に残った1店舗も売却をされて、そのパチンコ店は日本から姿を消したということです。
これは極端な例ですが、複数店舗を経営している時には店舗間での遊技機のチェーン店移動、成功例や失敗例の共有や横展開など様々なメリットがあります。しかし単独店舗になってしまった場合はそういった事はできなくなること、また人材の流動性がなくなり、ほぼ間違いなくすぐに行き詰ります。
普通の業界であれば、商圏を超えて単独店舗同士で協力体制を築くということもできるのかもしれませんがパチンコ店の場合は風俗営業に関する法律が邪魔をしてそういったことができにくくなっています。それを考えるとたとえ1店舗だけを残してもよほど大きなお店でない限りはすぐに破綻を迎えるのではないかと私は予測しています。
まとめ
ここまでは当たり前のことを書きましたが、私は実は他にも大きな理由があると思っています。それは見捨てられた元社員たちの存在です。
見捨てられたと感じている元社員たちが営業を継続している店舗を許すでしょうか?ほぼ間違いなくそのお店の悪評を広めるでしょう。またそれを聞いた一般客も自分だけが知っている情報のようにさらにあちこちで喋るでしょう。
私は業績悪化で倒産したパチンコ経営企業の中には、一方的に降格やリストラをした社員に悪評を広められたことが原因の企業があるのではないかと思っています。
社員は道具ではなくそれぞれに生活や養うべき家族などの守るべきものがあります。そういったことを考えずに一方的な降格やリストラをしてしまえば恨まれるのは当然です。
注意ですが、あくまでもこの記事で紹介したのは一例にすぎません。もしかすると自社社員と同じように扱い給料も上がる夢のような法人が存在する可能性は0ではありません。
さてここまで譲渡先の法人に移籍した際に社員にとって怖い話ばかりをしてきましたが、実はいくつか朗報もあります。
①本来であれば倒産であれば選択肢はありませんが、譲渡されることとでしばらくの猶予が出来ます。一概には言えませんが、大体3年から5年の間の雇用を提示されることが多いようでその間に転職など次のキャリアプランを計画することが出来ます。
②本来であれば賞与など出なかったはずですが、新体制移行までの士気を下げない為に寸志、もしくは基本給の1ヶ月分など出ることが多いようです。